雨脚が激しくなった4月13日の夜、国立アグレアブル・ミュゼにトランジション藤野の発起人のお一人、ヒデさんこと、榎本英剛さんとトランジションタウン事務局の小山美佳江さんをお招きして「内なるトランジション」と題した集いを無事終了しました。
イベントの企画概要はこちら http://manahouse.jp/news/1353.html
月曜日の夜、郊外の国立、そして雨!という条件の中、お申込頂いた25名の皆様とスタッフ&ゲスト合せて30余名の輪ができあがりました。地元国立のみなさんに〜なんて考えていたイベントですが、北は北海道・札幌から南は沖縄、そして愛媛や福井と各地から(この為に来られた方、たまたま東京にいらした方と様々ですが。)そして、地元国立や西東京地区始め、都心からも集まっていただきました。すでにトランジションの活動に関わっていたり、ライフスタイルをまさに移行中の方、そしてコミュニティを既に育て始めている方やこれから何か始めようとしている方などなど「未来への創造」へコミットしている皆さんの「学びたい!」というエネルギーに満ちた場ができあがりました。
フィンドホーンからトットネス、そして藤野へ
ざっくりとした経緯として、ヒデさんは2008年に帰国するまでの数年間、フィンドホーンがある町フォレスにご家族と滞在し、フィンドホーンでもご自身の活動をしながら過ごした後にトットネスに行きトランジションタウン活動に出会います。「これなら日本でできる」と、その種を日本に持ち帰り藤野という場に蒔きました。芸術家が多く住む土地、既にパーマカルチャーを進めているグループがあり、シュタイナー学園を軸に100件以上もの家族が移り住んだ土壌に、丁寧に蒔かれたトランジションタウンの種は相性よく根付き、そして芽生え、今は有機的な繋がりの中で大小の花を咲かせたり実をつけています。アート、農、教育、自然資源そしてそれらにコミットしている「人々」。それらを結びつけながら「トランジション藤野」が育って来たのだなあと。現在、藤野では行政ともかかわり合いながら地域通貨、藤野電力、森の手入れ、農業などいくつかの「部」が生まれそれぞれに「楽しく」活動中。
楽しくなければ持続可能ではない!
「やりたいことを、やりたい時に、やりたいことを、やりたいだけする」という「究極のボランティア」精神のもと、2008年の生まれたトランジションタウン活動は規模の大小を問わず、現在50カ所に広がっています。震災や原発事故の後の脱原発の意識や改めて「絆」を意識した人々の想いがその拍車を掛けたのは創造に容易いところでしょう。
外的なもの、大きなモノに頼らないで生きる「脱依存」、変化にしなやかに対応出来る底力である「レジリエンス」、自発的な力を最大限に発揮する「創造力」がトランジションのキーワード。そして、「人間」という存在をどう見るのか、という新たな認識を再定義していくという深いテーマも横たわる一方で、「楽しくなれければ持続可能ではない!」という軽やかな風も感じられる。自発性に基づく行動がすべてであると同時に、それに伴う自らのコミットメントに対する責任も発生する。ここが、なんでも「決まり」や「常識」といった外側の権威にすっかり頼り切って生きている我々日本人にとっては最もチャレンジが必要なところかもしれない。きっとその感覚を身につけられたら、我々が抱えがちな「人間関係」の悩みや「鬱」もかなり解消出来るのではないかと思う。なんせ、自分の中にオーソリティー(選択出来る力)が存在するのですから。
そして内なるトランジションとは
『自らの創造力を発揮しながら、地域のレジリエンスを高めることで持続不可能なシステムからの脱依存を図る為の実践的な提案活動』がトランジションタウン活動の定義。
現存するものへの批判と抵抗から、「どう在ればYESなのか。」という提案を。
そして「どうにもできない」から「何か自分でも出来る、創れる」という意識へ。
自ら自分ができることを発見して、それをコミュニティに還元し、自分ができないことと交換していく仕組み、それが地域通貨の根っこ。既存の社会からの評価では「貨幣価値」が得られなかったことが実は誰かの役にたてることかもしれない。とかく技術や資格、ブランドや学歴や経歴でその人の「価値」が外側からはもちろん、自らも決められてしまうことから「人やコミュニティに役立つこと」が「自分が必要とするものと交換できる価値」になることで「人」の価値が再定義される。通帳型の「資産」がマイナスになるほどに、誰かの価値を引き出したこととして讃えられるという発想。なんだか、心が軽やかになる。これなら、土地を持たない都会の生活でも始められる。この意識を分ち合える仲間と創り出せたら面白い。
あらゆるものがリソースであり、すでに、リソースはそこにある。これもまたトランジションタウンの大切なコンセプト。
無いもの探しは決して人を幸福にはしない。まずはある物探しから始まる。
人は誰かの役に立てた時に、自分の価値を見つけられる。人がどんなに褒めても自分自身がそこに価値を見いだせなければ本当の「自信」や「信頼」に繋がらない。あれがないと、これがないとできない、という意識では当然、「それ」や「これ」に変化が起きたら崩れてしまう。レジリエンスを育てるためにも、まずは自分の中のリソースに気づき、できるところから表現していくことで他者や社会との繋がりが生まれる。それは、もしかしたら最初は産毛がふわふわしているような傷つきやすい、柔らかな新芽かもしれないけれど、丁寧に育てていくことで、根を張り、幹を太くしながら、雨風をしなやかに受け流し一本の木のごとく育っていくのでしょう。
短い時間ではあったけれど、トランジションの種がしっかりと蒔かれました。
参加された方々から次々と、新しい視点の方向への感動、そして「温かさ」を持ち帰った、高い意識を持ちつつ、実践を伴ったしっかりと足元から育っている藤野の「今」から学ぶものがたくさんあった、などと感想が寄せられました。お一方は、ここ最近体調も思わしくなく、落ち込むことの多い時間だった中、思い切って参加され、実際に起きてそして現在進行形で進んでいる藤野でのポジティブなライフスタイルの創造を目の当たりにして、自分の中に希望を見つけられたと。まさに、トランジションの芽が芽生えた瞬間。この歓びが栄養となって新しい小さな芽が芽生えていくのでしょう。私は必然の流れとして近いうちに藤野ツアーを企画します!まず宣言。私の「シアワセなあるもの探し」。まずは、やってみたいことを、できることをやってみる、実験の連続。内なるトランジションへの道であります。
改めてご参加くださった皆さん、忙しい中お時間作って下さったヒデさん、みかえさん、そしていつも国立でそっと灯をともしながらそこに居て下さるアグレアブルの妙香さんとひさやさん本当にありがとうございました。心からの感謝と共に。